Rational Asset Manager のシステムおよびキャパシティーの計画のガイドライン

このトピックでは、IBM® Rational® Asset Manager の計画およびパフォーマンスのガイドラインについて説明します。

パフォーマンス要因

以下のような多数の要因により、キャパシティー要件およびパフォーマンス結果が決定されます。
  • サーバー数
  • プロセッサー速度
  • プロセッサーの数および構成
  • ノードのメモリー量
  • ディスク・ストレージ・デバイスおよび RAID 構成のタイプ
  • ディスク・ストレージ・デバイスのキャパシティー
  • ネットワーク帯域幅および待ち時間
  • Rational Asset Manager リポジトリー内に保管されるアセットの数とサイズ
  • システム・チューニング (WebSphere® Application Server、データベース、Web サーバー、オペレーティング・システム、およびキャッシュ・プロキシーについて)

ハードウェアの計画

サーバーのハードウェア要件を計画するときには、アクセスできる同時ユーザーの数およびリポジトリーに保管するアセットの数について検討してください。応答時間は、具体的なユース・ケースの詳細によって異なります。例えば、大容量のファイルをアップロードするために必要な時間は、Web ページを表示するための時間より長くなります。

アプリケーション・サーバー要件

組み込みの WebSphere Application Server は軽量のサーバーです。 これは、限られた数のアプリケーションが稼働していて、WebSphere Application Server が提供する完全な管理サポートを必要としない環境をサポートします。したがって、WebSphere 管理コンソールへの完全なアクセス権限がないため、アプリケーション、セキュリティー、およびパフォーマンスの設定を完全に管理することはできません。

WebSphere Application Server を使用する場合は、新規の組み込み WebSphere Application Server をインストールするか、またはそのサーバーの既存のバージョンを使用するかのいずれかを選択できます。どちらのサーバーも、任意のデータベースやその他のプラットフォーム・ソフトウェアと組み合わせて使用することができます。 ただし、他の製品と統合する場合は、Rational Asset Manager に組み込まれたバージョンの WebSphere Application Server は使用しないでください。

Rational Asset Manager を、WebSphere Application Server とデータベースが稼働している単一サーバーにインストールして、ローカル・ディスクをアセットおよび索引付けに使用することもできますが、この構成は、200 の同時ユーザーを超えては拡張できません。パフォーマンスを改善するために、少なくとも外部のデータベース・サーバーおよびファイル・サーバーを使用してください。

多数のユーザーを持つ環境で最大の柔軟性を得るためには、WebSphere Application Server Network Deployment クラスター環境に Rational Asset Manager をインストールしてください。これにより、複数のサーバーと複数のディスクにわたって、さまざまな方法で負荷を分散することができます。

制約事項: アプリケーション・サーバーのクラスターを作成および使用するには、IBM WebSphere Application Server Network Deployment (ND) が必要です。これは、IBM Rational Asset Manager にバンドルされていません。

必要な統合: Rational Team Concert

Rational Asset Manager には、Rational Team Concert が必要です。 Rational Team Concert アプリケーションでは、Rational Asset Manager 内のアセットのライフサイクル・プロセスが管理されます。 ユーザーがインストールして使用できる、限定バージョンの Rational Team Concert が組み込まれていますが、既存の Rational Team Concert サーバー・アプリケーションを Rational Asset Manager と連携して処理するように拡張することもできます。 詳しくは、Integrating Rational Team Concert with Rational Asset Manager を参照してください。

Rational Team Concert サーバー・アプリケーションは、WebSphere Application Server クラスターの一部としてデプロイすることはできません。 ただし、スタンドアロン・アプリケーション・サーバーを作成することはできます。WebSphere Application Server の配布済みサーバー・クラスターでの Rational Team Concert のアプリケーション・サーバー・インスタンスの作成を参照してください。

ストレージ要件

Rational Asset Manager ストレージは、データベースとファイル・システムの 2 つのコンポーネントによって構成されます。アセットはファイル・システムに保管され、メタデータはデータベースに保管されます。

アセットに必要なストレージ・スペースの量は、リポジトリーに保管する成果物 (ファイル) のタイプに依存します。テキスト文書およびスプレッドシートはサイズが比較的小さい一方で、ブート可能なオペレーティング・システムのイメージは大きくなります。

どれくらいのストレージ・スペースが必要かを計画する例を挙げると、3 年間で 70,000 個のアセットを持つエンタープライズ・デプロイメントのリポジトリーでは、データベースに 10 GB のスペース、ファイルに 250 GB のスペースが必要です。

パフォーマンスを向上させるためのハードウェア構成

データベース、リポジトリー索引、一時フォルダー、およびアセット・ディレクトリーを別々のハード・ディスクに配置します。複数のドライブを使用すると、アセットの取得や索引付けなどの特定の操作が、アセットの参照などのパフォーマンスの妨げにならないようにすることができます。

以下のように、ハードウェアを調整することにより、パフォーマンスを向上させることができます:
  • アセットをより多く保管したり、大きいファイルで保管するには、よりサイズの大きいディスクを使用します。
  • サーバー・アプリケーションの可用性を高めるには、ノードを追加します。
  • アプリケーションを使用できる同時ユーザーの数を増やすには、ノード、サーバー、またはメモリーを追加し、より高速のディスクを使用します。
  • 応答、検索応答、およびファイルのアップロードとダウンロードにかかる時間を改善するには、より大容量で高速のディスクを追加し、ネットワークを改善します。

メタデータ、メトリック、およびライフサイクル・プロセスの保管のためのデータベース要件

Rational Asset Manager では、2 つのデータベースを必要とします。1 つはアセットとデータ・ストレージ用のデータベースで、もう 1 つはライフサイクル・プロセスの管理用のデータベース (組み込みの Rational Team Concert アプリケーションによって使用されます) です。 最良のパフォーマンスを得るために、データベース・サーバー・アプリケーションは、別個のサーバーの専用ディスクに配置してください。パフォーマンスを向上させるために、データベース・サーバーは、アプリケーション・サーバーとは別の物理コンピューター上の、専用のディスクに配置してください。

Rational Asset Manager のデータベースのサイズは、アセットおよびその他のリポジトリー・アクティビティー (フォーラム、タグ付け、および登録済みユーザーなど) のサイズによって決まります。 多くのユーザー・アクティビティー (検索やダウンロードなど) に関するメトリックがデータベースに記録されます。 アセットをリポジトリーに追加しない場合でも、ユーザー・アクティビティー・メトリックが記録されるにつれてデータベースのサイズは大きくなります。データベースのサイズは、リポジトリーの使用量の増加につれて、直線的に増加します。

Rational Team Concert のデータベースのサイズは、追加するカスタム・ライフサイクルの量、および他のユーザーが Rational Team Concert をプロジェクト管理と開発ツールとして使用しているかどうかによって決まります。

アセット・ファイルの保管のためのファイル・システム要件

アプリケーション・ファイルとデータベースに必要なスペースに加えて、アセットを保管するための次のようなフォルダーが必要になります。
  • 永続フォルダー: このフォルダーには、リポジトリー全体のアセット・ファイルが保管されます。 リポジトリー全体に対して 1 つの永続フォルダーが存在します。 クラスター上では、永続フォルダーはすべてのノードとサーバーからアクセスできる共用ドライブ上に存在する必要があります。
  • 索引フォルダー: 検索実行の対象となる索引は、データベース・サーバーではなく各アプリケーション・サーバー上に存在します。

    索引のサイズは、アセットのサイズ、およびアセットの コンテンツの大半がテキスト・コンテンツ (索引付けが可能) かバイナリー・コンテンツ (索引付けが不可能) かによって左右されます。 大規模なテキストおよびアセット・ファイルを使用する場合、索引のサイズは大きくなります。索引で必要になるディスク・スペースの量は、アセットのタイプ、アセットの数、ユーザー・アクティビティーのレベル、 およびリポジトリーが存在する時間の長さによって異なります。

    クラスターでは、すべてのノードにそれぞれの索引フォルダー (サーバーのローカル・ハード・ディスク上にある必要があります) がある必要があります。各サーバーの索引フォルダーは、共有ドライブであってはなりません。

  • ローカル・フォルダー: ローカル・フォルダーには、サーバー・アプリケーション用の一時データが保管されます。 このフォルダーは、共用ドライブではなく、サーバーのローカル・ハード・ディスク上にある必要があります。クラスターにインストールしようとしている場合は、そのクラスター内の各ノードには、他のノードと共用されていない専用のローカル・ストレージ・フォルダーが配置されている必要があります。 複数のサーバーを同じ物理ノードにインストールする場合は、これらのサーバーはすべて、同じ物理ローカル・ストレージ・フォルダーを使用する必要があります。

ユーザー・レジストリー

大規模なデプロイメントでユーザーを管理するには、既存の LDAP または他のカスタム・ユーザー・レジストリーを使用できます。 WebSphere Application Server および Tomcat アプリケーション・サーバーの両方で LDAP レジストリーを使用したサーバーへのアクセスの管理がサポートされています。

Rational Asset Manager では、外部レジストリー (LDAP やカスタム・レジストリーなど) からユーザーを追加できますが、外部レジストリーを使用する必要はありません。ファイル・ベースのセキュリティー・システムを使用することができます。また、WebSphere Application Server を使用している場合はオペレーティング・システムのユーザー・アカウント・データベースを使用することができます。

セキュリティーが構成済み (例えば、LDAP を使用) の既存の WebSphere Application Server に手動でインストールする場合、Rational Asset Manager のインストールおよび構成が完了するまでに、アプリケーション・サーバーをファイル・ベースのセキュリティーに対応させて再構成してください。

ファイル・ベースのセキュリティーは、実稼働環境用にはなっていません。

ユーザー・アクションを改善するための構成

当初は初期プラットフォーム・サイズを使用し、その後、実稼働環境でアップグレードする予定の場合は、各種操作で使用されるシステム・リソースを相対的に検討します。例えば、Eclipse クライアントを介した操作では、Web クライアントの操作よりも多くのシステム操作が消費されます。

アセットの検索、ダウンロード、表示、登録などのユーザー・アクションは、アセットの保管で必要とされる処理リソースおよびメモリー・リソースよりもはるかに多くリソースを必要とします。より多くの同時ユーザーが追加されると、より多くのより高速なサーバーが必要になります。

構成に影響を与える可能性のあるユーザー・アクションは、以下のとおりです。
  • ユーザーによるアセットの検索: サーバー・ノードごとに、「索引」ストレージ・フォルダーの検索索引を保管するために、ディスクを追加するか、またはより高速のディスクを使用します。
  • ユーザーによるアセットの作成と更新: リポジトリー用の永続ストレージ・フォルダーのディスクおよびネットワーク待ち時間を追加します。
  • ユーザーによるファイルのダウンロード: サーバーごとにディスク、プロセッサー、およびメモリーを追加します。
  • ユーザーによるアセットのレポートおよび監査の実行: より高速のディスクを使用し、メモリーを追加して、データベース・サーバー用のプロセッサーの性能を向上させます。
  • Web サービスを使用して Rational Asset Manager にアクセスするシステム: 構成ページで、Web サービスのユーザーを表示し、ユーザーが保持できる同時セッションの数を構成します。

パフォーマンス向上のためのシステム・チューニングの詳細は、Rational Asset Manager のパフォーマンスのチューニングを参照してください。単純なシステムおよび複雑なシステムの概念図については、デプロイメントの例を参照してください。

多数のアセット

リポジトリーに数万または数十万のアセットがあることが予想される場合、索引付けなどのアセット管理操作のいくつかは、数時間かかることもあります。RAID (新磁気ディスク制御機構) やディスク・ストライピングなどのデータ管理手法およびハード・ディスク管理手法を使用すると、パフォーマンスを改善できることがあります。ディスク・ストライピングは、データをブロックに分割して、 データ・ブロックを複数のハード・ディスクの複数のパーティションに保管します。 ご使用の環境用にディスク・ストライピングをセットアップする方法については、オペレーティング・システムの資料を参照してください。また、前述したように、リポジトリー索引、アセット、およびデータベースを、それぞれ別のハード・ディスクに配置することを検討してください。

コンポーネント・ベースのソフトウェア・アーキテクチャー手法についての詳細: この手法では、システムの主要な抽象化を特定し、回復力と保守容易性を確保するようにシステムを構築する方法を決定することに重点を置いています。コンポーネント・ベースのソフトウェア・アーキテクチャー手法について詳しくは、http://www.ibm.com/developerworks/rational/practices/compbased_sa/ を参照してください。

大容量ファイルの転送

大きいサイズのファイルのアップロードおよびダウンロードを実行する予定の場合は、以下のガイドラインに従ってください。
  • 永続フォルダーについては専用ディスクおよび専用サーバーを使用してください。
  • 固有のパフォーマンス上の問題がある場合は、Rational Asset Manager のパフォーマンスのチューニングにある情報を参照してください。
  • 大容量ファイルをアップロードする場合、ユーザーは Web 上の「登録」ウィザードで拡張アップロード・ユーティリティーを選択できます。
  • Rational Asset Manager では HTTP 範囲要求をサポートします。Web クライアントはこの要求を使用して、中断されたダウンロードを再開したり、ファイルを部分的にダウンロードしたりします。 ユーザーは、大容量ファイルをダウンロードするときに、拡張機能 DownThemAll! (https://addons.mozilla.org/en-US/firefox/addon/201) が適用された Firefox などの Web ブラウザーを 使用して、HTTP 範囲要求を使用できます。 また、ユーザーは、大容量のファイルを小さな複数のファイル・セットに変換することを検討できます。

ヘルプと支援

Rational Asset Manager Web アプリケーションは、ページ、ツール、およびフォームのコンテキスト支援を提供するためにヘルプ・アプリケーションにアクセスします。Rational Asset Manager Web アプリケーションのコンテキスト・ヘルプの例。マウス・カーソルを疑問符 (?) の上に移動して、ページ、ツール、またはフォームについての詳細情報を表示します。

Rational Asset Manager ヘルプ・アプリケーションにアクセスするための認証 (例えば、アプリケーション・サーバーや外部ファイアウォールを経由した認証など) をユーザーに要求する場合は、Rational Asset Manager Web アプリケーションと同じサーバー上に Rational Asset Manager ヘルプ・アプリケーションをインストールする必要があります。


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